Joanne Bargman氏は,PD患者における残存腎機能と

Na/水バランスとの関係について触れた。PD患者を対象とした近年の臨床試験や観察研究は,適切な透析処方も重要であるが,予後予測因子としては残存腎機能がより重要であることを明らかにしてきた。残存腎機能の有益性はNaと水の排泄によるところが大きく,CANUSA
Studyでは予後予測因子として尿量が,低分子物質のクリアランスよりも重要であることが示された。また,残存腎機能の低下は高血圧や左室肥大と相関することも示されている。一方,利尿薬は低分子物質のクリアランスを変えることなく,Naと水の排泄を促進する。このことから同氏は,残存腎機能の維持には利尿薬の有用性が期待できるとし,「残存腎機能を維持するために努力がなされるべきである」と述べた。
Allen Nissenson氏も,PD患者ではHD患者に比べ,血圧上昇や左室肥大を生じやすく,

これが生存率の低下につながっているとして,その原因は体液過剰にあると言明した。PD患者では残存腎機能の低下にともない,体液量が増大し,それにつれて高血圧や左室肥大が悪化する。逆に体液過剰を是正すれば,高血圧や左室肥大も改善するという。したがって,PD患者の予後を改善するには「正常な体液量を維持するよう細心の注意が必要だ」と同氏は述べた。
ただし,C. Gentiana Voinescu氏が指摘したように,PD患者における血圧上昇は必ずしも体液過剰だけに起因するわけではない。レニン-アンジオテンシン系や交感神経系の亢進,血管収縮因子の増加,血管拡張因子の減少,副甲状腺ホルモンの過剰分泌による血管内カルシウム濃度の増加および血管の石灰化など,その機序は多様である。また,PDを導入される段階で既に多くの症例が高血圧を呈しており,その影響も大きい。
PD導入後は体液量の正常化により,血圧はいったん低下するが,PDの長期化にともない残存腎機能が低下し,腹膜機能の低下によって限外濾過も減少してくると,それに応じて高血圧は増悪,左室肥大も進行して予後が悪化する。こうしたことからVoinescu氏は,まずは導入後早期の予後に優れるPDで治療を開始し,限外濾過の減少を契機としてHDに変更するのが,理にかなった方法ではないかと提議した。
PD患者において体液量の増大が生じる原因は,


残存腎機能の低下や腹膜における限外濾過の減少だけではない。Tao
Wang氏は,PD患者では塩分と水分の排泄が減少している一方で,一般にその摂取があまり制限されておらず,これが体液過剰の最大の原因だと指摘した。Fehmi
Akcycek氏も,体液量と塩分の関係は腎臓の果たす役割が大きいが,その一方で血漿浸透圧は「のどの渇き」という強力なメカニズムによって守られているとして,PD患者には塩分の摂取制限を課し,のどの渇きを抑えて必要以上に水分を摂取しないよう指導することが重要だとした。
しかし,塩分の摂取制限が血圧を低下させ,


左室肥大を予防することがわかっていても,それを実行させるのは実際にはなかなか困難である。また,特に自動腹膜透析(APD)による夜間就寝中の短時間での透析液交換では,Na
+ふるいによってNaの貯留が生じやすいという問題もある。こうしたことから,Krassamir Katzarski氏は低Na透析液の有用性について紹介したが,これはNa除去には有効であるものの,体液量に対する効果は今のところ疑問視されており,さらに長期の検討が必要だという。
結局,PD患者における体液過剰の問題を解決するには,

腹膜における限外濾過の改善,あるいは限外濾過不全の予防を避けては通れず,また,それが最も現実的な方法といえる。ただし,
Mark Faber氏が示したように,高濃度ブドウ糖透析液を用いて限外濾過を増加させる方法は,既に腹膜透過性の亢進したハイトランスポーターには無効であり,長期的には腹膜の機能や形態を変性させ,糖脂質代謝に悪影響を与えるため,これも今や次善の解決策だという。
なお, Rajish Mehrotra氏は,食事制限のコンプライアンス不良,不適切な透析処方,機械的な問題から生じる限外濾過の減少は可逆的なものだとして,真の限外濾過不全はリンパ管吸収の増加,腹膜透過性の亢進,アクアポリンの機能不全などから生じると説明した。
では,PD患者の限外濾過に関する問題を解決する答えはどこにあるのか。

Ram
Gokal氏は,ハイトランスポーター(HT)でも除水量の改善が可能だとして,PD患者の体液管理を向上させるにはイコデキストリン透析液が解決策となることを示した。
同氏らが開発したイコデキストリン透析液は,高分子浸透圧物質であるイコデキストリンを含有する等張の透析液であり,腹膜透過性が亢進した患者でも効果が期待できるため,CAPDやAPDと組み合わせて長時間貯留する透析液としては最適な条件を兼ね備えているという。
実際,その効果はこれまでに数々の報告で明らかにされている。例えば,PlumらのEuropean APD Studyによると,昼間の長時間貯留において2.5%ブドウ糖透析液ではマイナスだった総限外濾過量を,イコデキストリン透析液はプラスに転じ,12週間の試験期間中これを維持した(
図)。また,WolfsonらのIcodextrin
USA Studyによると,1 年間の経過において,2.5%ブドウ糖透析液群は体重が2.3kg増加し,浮腫が17.9%にみられたが,イコデキストリン群に体重増加はなく,浮腫も6.3%と有意に少なかった。
腹膜透過性の指標であるクレアチニンのMTACが大きくなるほど,ブドウ糖透析液では限外濾過量が減少するのに対し,イコデキストリン透析液では逆に増加することも明らかにされている。
Gokal氏は,イコデキストリン透析液がHT患者に対しても有用であることを示し,「イコデキストリン透析液は体液管理に大きな進展をもたらす」と述べた。